都市空間の新たな未来

 日本の都市の均質化が謳われて久しい。同時に、都市のアイデンティティが切実に問われるようになった。

 都市はそれぞれ固有のアイデンティティをもつ。そこに生ずる魅力は時代をこえて生きつづける。一方、時代変化に応じて新陳代謝をしてゆくこともまた、都市には必要不可欠である。アイデンティティの維持と、新陳代謝。これらをどのように両立してゆくのか。これが、現代の都市が抱える課題であると考える。

 東京都中央区銀座。文明開化の象徴・銀座煉瓦街として整備された後、関東大震災や戦災といった困難を乗り越え、人々の手で銀座は幾度も蘇った。多くの老舗が集う商店街でありながら、日本に、日本人に、常に新しい文化や時代の先端を示してきた。そして東京オリンピックを契機に、銀座は「世界のGINZA」としてひとつの最盛を迎えた。70年代、渋谷や新宿といった副都心の開発が盛んになるにつれて繁華街の役割を分つようになっても、育まれてきた文化と新しく入ってきたモノをうまく取り込みながら、新陳代謝を重ねてきた。ところが、バブル崩壊後、都心再開発の動きとともに空き店舗に多くの海外ブランドやチェーン店が店を構えた。そして現在、日本のみならず世界的な経済不振の打撃を受け撤退した店舗の跡地を中心に、ファストファッションが次々と店を構えている。銀座にも、均質化の波が押し寄せているのである。

 日本を代表する繁華街として栄えてきた銀座においても、アイデンティティを維持しつつ、新陳代謝をすることは切実な課題となっている。ましてや、地方都市においては尚更である。その中で銀座という都市のあり方を考えることは、これからの都市における都市性とは何かを問い直す重要な契機となり得るだろう。
 本ワークショップの目的は、銀座および中央通りを対象に、都市の新陳代謝のデザインを専門を超えて議論し、都市空間の新たな未来を見出だすことである。